親の脛にバターは塗れない

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自分のスキルのことをもっと詳しく知らなければならない。 今回もそうだが、初めてスキルを使った時も、今思えば危なかった。 これは、加減を間違えれば誰かの命をも奪いかねない。 自分の命も含めて、だ。 しかしこれは誰に言ってもいいのもではない。 友達、言われてみて確かに思うところがある。こんなことを相談できる友人もいなければ、先輩も後輩もこの世界にはいない。 もっとも、向こうの世界でもそんなもの片手で数えられる程しかいなかったが、それでも確かにいた。 「おかえりレミル」 ギルドから帰った僕を母は洗濯物をたたみながら迎えた。 おかえり~と二階からラミアの声がする。 「、、、ただいま、今日は手紙を届けてきたんだ」 そういって僕は今日の依頼の出来事を話して行く。 レイミアは丁寧に服をたたみながら、そうなの、すごいね、と聞いてくれた。 「それとね、母さん」 「なあに」 自分が本当はソウタという人間であったこと、違う世界の記憶を持っていること。 もしかしたら僕は、レミルという人格を食ってしまったのではないか、レミルの前世が僕なのではなく、僕がレミルの人生を途中から乗っ取っているのではないか。 なんのためにこんなスキルを授かってしまったのか。 何故自分のスキルは読めないのか。 言ってしまえば楽になるのだろうか。 こんなこと、誰にも言えない。 「んーん、なんでもないや」 僕はこんなにも恵まれた家族に囲まれていながら、相変わらず、何も変わらず、何も変われず。 日本で引きこもっていた僕のままだったーーー ーーーーーーこれ楽しいね。
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