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ドス、と鈍い音が聞こえた。
徐々に腹部が熱を帯び始め、お気に入りのシャツにじわじわと何かが滲んでいく。
血。
そう理解するのにさほど時間はかからなかった。
脚に力が入らなくなり、そのまま膝から崩れ落ちる。
地面に横向きに転がっている自分の腹部から生えている柄を中心として、源泉のように湧いてくる血液。
そこでやっとざわつき始める周囲の人々。
悲鳴。悲鳴。悲鳴。
「…あはあ」
倒れ込んでいる僕を覗き込む彼は、にたあ、と気味の悪い笑顔を浮かべて僕に刺さっている刃物を抜き取った。
激痛で叫びたくなるが、もう声も出ないほどに意識が遠い。
だんだん掠れていく視界の中で、刃物をもった彼はもう一度それを振りかぶった。
ドス、と鈍い音が聞こえた。
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