バターとお母さん

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母の名はレイミアといって、これまた美人のできた奥さんなのだ。色白の肌に透き通った蒼い目、朝早くから家事を始めるのにも関わらず、彼女の髪は綺麗に梳かされ、朝日を浴びて白金の輝きを放っている。 レミル氏自分の母をげき褒めである。だって可愛いんだもの。れみを。 俺の母さんがこんなに可愛いわけがない! はい。 いやほんとのところこのレイミアお母さんまーじで可愛いんだわ。ドストライク。スリーアウトチェンジ。 もうレミルちゃんったら朝から元気!(自重) それにきいて、カテゴリー的にはこれ僕のお母さんなんですけど気持ち的にはお母さんとは言いにくい。どっちかというとそのなんていうか人妻よりでもうなんていうか俺の母さんがこんなに可愛いわけがない! はい。 正直なところレミルという名前にはまだ慣れない。 前世の記憶を持ち合わせている手前、国山相汰という名前の愛着を捨てられずにいるのだ。 これがまた複雑なものでレミルさん今年でなんと7歳になる。 そして僕にはソウタとして過ごしてきた23年間の記憶と、レミルとして過ごしてきた7年間の記憶が混在しており、それはもうてんやわんやしているのだ。 すごいよね!こんな美形のショタの中身がくそニートだよ!おめでとう!! レイミアお母様なんてトーストにバターを塗る仕草だけでもう朝から元気百倍アンパンマンなのに僕の前世のお母さんなんて顔にバター塗ってんのかよってくらいのここらへんでやめときますね。 二つ年下である妹のラミアと我らがお父様であるランドレを起こし、四人揃って食卓を囲む。 この見慣れたはずの風景に嫌な頭痛と違和感を覚えながら、一口、また一口と齧るトーストはどこか味気がなく、それを誤魔化すようにミルクを喉に注いだ。 なぜ自分は前世の記憶を取り戻してしまったのか。 この剣と魔法の織りなす世界で僕はどう生きていけばいいのか。 「レミル、おまえもあと三年で就職するんだからな。何になりたいのか、しっかり考えておくんだぞ」 うぉおおおおおぉぉぉぉおぉおぉおんんん!!! 働きたくないよぉふええん。えぐえぐ。 この世界ではそんな泣き言も言えるわけがなく、頑張るよ、と笑って返した僕は、ふと前世の母の顔を思い浮かべた。 母さん、どうしてるだろうか。 そんな思いにふけりながら、また一口、トーストを齧った。
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