妖怪の話

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「うちの商品は、どれも自慢の商品です。遠方に行って見つけてきたこの近辺の薬屋には無い特別なものばかりを集めましたよ。全部、からだにいいものです。市販のものは、いっさい置いてないですよ。」 そう言って、フーッと煙を吐いた。 「あなた、ここでアルバイトしない?」奥さんからそう言われたので、2日後から働くことになった。店主夫妻は気さくで、人を分け隔てなく付き合う主義らしく、薬だけでなく健康器具や、食料品、いろいろな商品が入ってきた。どれもこれも、特別な人の繋がりで見つけ、仕入れた特別なものだそうだ。 化粧品は、店の売り上げの大半を占めているようだった。研究を重ねた、希少な原料を使った化粧品と言うことで値段も一万円以上、三万円くらいのもので、オシャレのセンスもあるご婦人がよく買いに来られていた。店の中の座敷に招いて、化粧品にまつわる勉強会もしていた。中央からセンセイが来られたりした。 特別な食料品の繋がりで、野菜も置いてあるので、社会運動やイベントの主催される方が来られることもあった。世界中の戦争被害者のこどもの状況を絵にしておられる地元で活躍中の画家がいて、その方の展覧会を開催されるポスターを持ってこられた青年が来たときの話。ちょうど化粧品の勉強会開催中だった。私は店番をしていたので、奥さんを居間から呼んで、ポスターを貼らせて欲しいという青年に対応してもらった。     
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