妖怪の話

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私の知ったドイツパンは、ライ麦と水で、酵母を発酵させ、粉と水を足していって、1週間かかってライサワー種をまず作り、それを生地に入れて、焼く。かなり酸味があるライ麦に元々付いている酵母だけで作るパンだ。塩分は、海から作った塩を使った。まず、100%ライ麦のパンと60%のものとから始めた。店のキッチンでパンを焼いて売ることを奥さんにも承諾を得てボチボチ始めていた。味見してくださるお客様もいた。今思うと、かなりお客様も勇気がある方だった。 ある日、実験データや、グレイテル房子さんの本と試作のパンを奥さんに見せた。 老眼鏡を頭にずらし、本を手に取って、しばらくじっと読まれた後、 「この本、一日貸して。」 そういって、グレイテル房子さんの経歴と写真を凝視していた記憶だった。 翌日、奥さんから、今晩から2?3日、二人で上京するので、留守になる。カギを私がもっていて、その間、一人で店番をするように言われた。急だったけど、他に何か用事がある訳でなかったので承諾した。 クッキーは、家で夜中の2時頃まで焼いているのが、普通の状態だった。そして、翌日は家事をしてから10時の開店前の準備に出かけていった。だから、バイト中の時間給以外に、クッキーは歩合給で貰っていた訳だ。 グレイテル房子さんに会ってきた店長ご夫妻が、東京から帰ってきた。大興奮がさめやらずという状態。これから、どんどん、パンを焼く計画が着々と進んでいった。まず、グレイテル房子さんを呼ぼうという話しになったらしい。講演会と、パン教室を一日で行う、強行スケジュールが出来上がった。     
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