海の向こうから

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仕事柄、心配がないわけじゃない。 でも、彼の写真にかける情熱は強く、そこがまた好きだったから止めることはできなかった。 仕事場が戦場の彼に一つだけ約束させたのは、毎日連絡を入れること。 約束は毎日だが、状況によっては入れられなくて何日か開くこともあり私を不安にさせたが、でも、完全に途切れてしまうことはなかった。   今回の取材に出る前に、プロポーズされた。 「綾乃がいれば帰る場所はここだって安心して戦場に行ける。 だから、結婚して欲しい」 嬉しかった、根無し草のように戦場をふらふら渡り歩いてる彼が、帰る場所は私のところだって約束してくれたことが。 彼はダメもとだったようだが、私は二つ返事でOKした。   しばらくは毎日連絡が来ていた。 けれど、一日、二日と開き始め、唐突に途切れた。 しかも、彼が現在いる国で激戦になっているというニュース。 不安で、不安で、ひとりでいると叫び出しそうで、ひい婆ちゃんのお見舞いなど来てみたのだ。
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