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はじめのうちはまめに手紙がきとった。
でも週に一回が二週に一回になり、月に一度になってとうとうこんことなった。
明るくは振る舞っとたけど、不安で不安で毎日誰もおらん海に行っては、あの人の無事を祈っとった。
その日。
見たことないほど綺麗な夕日に、海が真っ赤に染まった日。
いつものように神様にお願いして目を開けたら、夕日の中に黒い点が見えた。
近づいてくるにつれてそれは、飛行機だってわかった。
どうして飛んでるのか不思議になるくらいぼろぼろの飛行機は、すーっと音もなくまっすぐ婆ちゃんの方にやってくる。
そして目の前で旋回してまた夕日の中に消えていった。
あの人は帰ってきてくれた。
海の神様が願いを聞いて叶えてくれた。
そう、思ったよ。
だから、次の日に戦死の知らせが来ても落ち着いて受け入れられた。
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