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「誰に云っても信じてもらえんだろうから、この話は胸にしまって、墓まで持って行くつもりだった」
僅かに笑うひい婆ちゃんは、やっぱりこのあいだと同じでひとりの女性の顔をしていた。
それほどまで、その人のことを愛してたんだ。
「だから綾乃ちゃんも、海の神様にお願いしんさい。
きっと帰ってくるから」
「ひい婆ちゃん……」
……いまの私と同じような思いをした、ひい婆ちゃんの云うことだったら信じられる気がした。
私の彼は戦場カメラマンをしている。
普段、ほわほわゆるゆるで本当に大丈夫なんだろうかと心配になるが、カメラを握ったとたんに人が変わる。
知り合ったのは些細なきっかけだった。
そのとき、彼としては珍しく猛アタックされて、折れた。
つきあっていくうちに、優しい顔にも厳しい顔にもどんどん惹かれていった。
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