神宮秋奈の毒書患想1

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◆ あれから一週間が経過した。 "彼"からの手紙は毎日寮のポストに届けられてくる。 「今何色の下着を着ている」「今日はあそこの店で昼を食べてた」「毎日キミの事を考えている」と云った私の事を監視するような内容に始まり、男子と一緒に居れば「一緒に居た男は誰? 君に手を出す男は僕が許さない、殺してやる」と云う脅迫を仄めかす手紙だ。 ストーカーは警察に通報する冪だけれど、通報する所まで監視されていると思うと怖くて出来ない。誰に相談したら善いか判らない。 こうしてベッドの布団の中で踞っている所も"彼"に見られているような気がする。部屋のカーテンを閉めきっても、明かりを消しても、其の気持ちが緩和されることはない。  不意に部屋のドアフォンが鳴り響く。  とうとう、彼が私の部屋にまで来てしまったのかと心拍が酷く跳ね上がり、全身に鳥肌が立ち、わなわなと震戦が始まる。 必死に息を潜め、足音を殺し、玄関に向かうと、ドアスコープにゆっくりと右目を近づけて見る。 ◇
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