思い出の海で

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「あ、麗ちゃん!麗ちゃんだ!」 同級生の1人が私を見つけて、跳び跳ねながら大きく手を振ってきた。 彼女の声に反応して、他の同級生も皆私の方を見た。 「お、本当だ。」 「おーい、そんなとこいないでこっち来いよ!」 「そうだよ。れーいー!こっちおいでー!」 次々に声をかけられ、私は砂浜へ下りていった。 「麗ちゃん、久しぶり!」 「久しぶり。ライン、返事しなくてごめんね。」 「いいよぉ。来てくれて嬉しい。あっちにシート敷いてあるから行こう。」 連絡をくれた友達に手を引かれて、同級生達が座っているところまで歩いていった。 「麗、何か飲むか?」 そう言ってクーラーボックスを開ける同級生の男子。 「貰っていいの?」 「何遠慮してんだよ、らしくねー。これ、うちの親からの差し入れだから気にすんな。ほら。」 そう言って笑顔で差し出されたペットボトルは、私が好きな炭酸飲料だった。 「ありがと。私が好きなやつ覚えててくれたんだ。」 「当たり前だろ。それよりお前、大学どうよ?」 「うーん…。まぁ、それなりに楽しいかな。でも、ここと全然違うからさぁ。時々地元がすっごい恋しくなるときがある。」 「あ、それすっげーわかるわ!」 「私も私も!」 「私の大学なんか、まわりギスギスした人多くてさ。悪口とかばっかりの子とかいて、すごい疲れる。」 みんな地元を離れて半年くらいしか経っていないけど、地元を恋しく思うことがあるようだ。 中には恋しくすぎて、夏休みになったその日のうちに実家に帰ってきた子もいたようだ。 その後も一人暮らしのことや大学での出来事を話盛り上がった私たち。 一通り話終わると、同級生の男子が突然立ち上がった。 「あぁ~、あっちー!海、海入ろうぜ!」 「賛成。ほら、みんな行こう。」 皆が立ち上がり、羽織っていたパーカーをシートの上に放り投げ出した。 「麗、行かねーの?」 「うん。私は、ちょっと…。」 「あ……。」 声をかけてきた男子の表情が、申し訳なさそうに曇り出す。 「そんな顔しないで。大丈夫だから。ね?泳いできて。私、ここで荷物番しててあげるから。」 「お、おう。じゃあ、行こうぜ。」 海へと駆け出す同級生。 でも1人だけ、私の横で立ったまま女の子がいた。
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