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「どうしたの?海、行かないの?」
「麗…。無理、してない?私たちが呼んだりしたから、来てくれたけど、本当は……。」
「実は来ないつもりだった。でも、今日お母さんに家追い出されちゃって。」
「追い出された!?」
「そうなの。毎日引き込もってばっかり!って怒られて、玄関の鍵まで閉められちゃって。でもね、来てよかった。皆には会いたかったし、高校のときみたいに皆で沢山喋って楽しかった。」
「本当?」
「本当だよ。まだ海には入れないけどさ、ここで皆がはしゃいでる姿見るのは楽しいよ。この海だって、嫌いなわけじゃないし…。だから、そんなに気にしないで。」
「うん…、うん!」
彼女は私に抱きついて、安心したような笑顔を見せた。
そして彼女も海へ駆けていき、皆と合流した。
1人シートに座る私は海で遊ぶ皆を見たり、久しぶりにきた海水浴場を見渡したりしていた。
すると、砂浜の隅にある岩場で一瞬人影が見えた気がした。
気のせいとも思ったけど、少し気になって岩場の方へむかった。
ここは岩場に挟まれた小さな砂浜で、私がむかってる方の岩場は余り高くなく登りやすい。
そのため地元のやんちゃな子はそこに登り、海へ飛び込んで遊んだりする。
が、年に1人くらい怪我をする子がいる。
親たちは絶対にやめなさいと子供たちに言うけれど、毎年飛び込む子が必ずいる。
だから心配になって、私は岩場を登った。
岩場の上には誰もいなかった。
もしかしたらもう飛び込んでしまったのかもと思い海を見下ろしたけど、人がいる気配はなかった。
やっぱり気のせいだったみたいだ。
そう思い岩場を下りようと振り返ると、人の姿があった。
私は驚き、体がビクッと跳ね上がった。
そして、背後にいた人物の顔を見て心臓も呼吸も止まるほど驚いた。
呼吸の仕方を忘れてしまったかのように息苦しく、心臓はうるさいくらい強く早く脈を打つ。
頭は真っ白になって、今この場に立っていることが精一杯だった。
さっきまで誰もいなかったはずの場所に、突然音もなく気配もなく現れた人物。
彼は、いるはずのない人。
混乱したままの頭で、無意識に彼の名を口にした。
「や…、まと……。なの…?」
「うん。麗ちゃん、久しぶり。」
「嘘…。そんなわけないっ!だって…、だって大和はっ…。」
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