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私は大和から離れるように、一歩後ずさる。
すると素早く大和に腕を掴まれ、体が強張った。
「危ないよ。海に落ちちゃう。もっとこっちに来て。」
そう言って優しく腕を引き、海から少し離れたところに腰を下ろした。
隣に座るよう促すように、自分の隣をペンペン叩く大和。
私は少し戸惑いながら、彼の隣に座った。
大和は何も言わず海を見ていた。
私はそんな彼の横顔を見ながら、ソッと大和に掴まれた腕に触れた。
痛かったわけじゃない。
優しく掴まれていた。
でも掴まれていた感覚が、まだしっかり腕に残っていた。
大和の手、温かかった。
大和との出会いはずっと昔。
同級生で、幼稚園に入る前からよく遊んでいた。
大和は男の子たちと外で駆け回るより、女の子たちとお絵描きをして遊ぶような大人しい男の子だった。
ちょっと頼りない大和が可愛くて、弟がいたらこんな感じなのかななんて思いながら、まるで自分の弟のように構っていた。
そんな私たちの関係が変わったのは、中学の卒業式の日。
お互い違う高校に進学が決まり、今まで毎日同じ学校に通っていた生活が終ろうとしていた。
卒業式の後、私の制服の裾を引っ張って俯きながら『麗ちゃん、ちょっといい?』と消えそうな声で言った大和。
『うん。』と答えると、大和は私の手を握って歩き出した。
私は大和に手を引かれながら、この海へとやってきた。
大和は足を止め、私と向かい合った。
『麗ちゃん…。好きですっ!付き合ってくださいっ!』
耳を真っ赤にして、真剣な表情で真っ直ぐ私の目を見る大和。
すごくシンプルな告白。
弟のように思っていた大和が、突然男に見えた。
そして心が温かくなって、嬉しさに自然と笑顔になった。
『喜んで。』
そう答えると、大和はびっくりした顔で私を見た。
『本当っ!?僕でいいの!?』
『大和がいいのっ!』
このあと大和に聞いた話だが、大和は絶対に断られると思っていたらしい。
けれどこのまま思いを伝えないと後悔すると思い、卒業式の日に告白しようと1ヶ月以上前から心に決めていたそうだ。
お互い初恋で、初めての恋人。
それにまだ15歳。
私たちのお付き合いは、それはそれはピュアなものだった。
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