思い出の海で

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春休みには電車で繁華街に遊びに行き、映画を見に行ったりした。 高校に入学した後も、お互いの家を行き来して学校での出来事を話したりした。 たまに手を繋ぎながら散歩をして、まだ入れない海を眺めたりするときもあった。 部屋で手を繋ぎながら隣で座ったり、時々ソッと触れるくらいのキスをしたり。 それだけでお互い頬を染めたりしていた。 そんな時間が、本当に幸せだった。 高校に入って初めての夏休み。 私たちはいつもの年と同じように、同級生たちと海に来ていた。 高校に入ってバラバラになった同級生たち。 中には久しぶり会う子もいたりして、お互いの近況報告なんかをしたりした。 何人か高校の同級生や先輩と付き合ってる子がいたりして、恋バナで盛り上がる。 もちろん私と大和が付き合ってるのも知られているので、まわりから質問攻めにされた。 『麗は大和とどうなの?』 『どうって…。仲良く過ごしてるけど。』 『なんか意外だったなぁ~。』 『意外?』 『だって大和のこと、弟みたいとか言ってたじゃない?それが付き合うことになったって聞いたら、びっくりするじゃん。』 『まぁ、確かに弟みたいに思ってたんだけどね。でも告白されたときの顔見たら、弟なんかじゃなく男の人なんだってときめいちゃったんだよね。そしたら、私も好きだって思ったわけよ。』 『へぇ~。』 『でも彼氏してる大和とか想像つかないんだけど。』 『私も!お姉ちゃんしてる麗ちゃんしか想像できない。』 『そう?大和って紳士だよ。一緒に歩いてたりすると、必ず大和が車道側歩いてくれるし。しかもそれをさりげなくやるんだよ。』 『マジ?』 『大和カッコイイ!!』 私が女の子たちと盛り上がっているように、大和も男の子たちと笑顔で話していた。 そんな姿を見ていると、振り返った大和と目が合った。 すると大和が優しい微笑むから、私もそれに答えるように笑いかけた。 そんな私たちを見た女の子たちに、私はしっかりからかわれた。 『海、荒れてきたね。』 『あぁ、明日天気悪いみたいだからそのせいかもね。』 『じゃあ、そろそろ帰りますか。危ないし。』 昼頃まではほとんど波のなかった海が、少しずつうねり時々大きな波を打つほど荒れ始めていた。 風も強くなってきていた。
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