思い出の海で

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おばさんのその言葉に、その場にいた全員涙を流した。 あちこちから、すすり泣く声が聞こえてくる。 そして私たちは、来年も皆で海に行くとおばさんに約束した。 家に帰ろうとしたとき、私だけおばさんに呼び止められた。 手を出すように言われ、伸ばした手の平に何かを乗せられた。 それは、初めてのデートで買ったペアリングだった。 『これ…。』 『あの子の指にあったのを、大切にとっておいたの。それ、麗ちゃんの指輪とお揃いよね?』 『はい。』 『それ、麗ちゃんに持ってて欲しいの。その方が、あの子も喜ぶと思うから。』 そう言われて、形見としてペアリングをもらった。 そしてチェーンに通して身につけていた自分の指輪と共に今でも肌身離さず身につけている。 私はおばさんとの約束を守ることができず、あの日以来1度も海に行っていない。 あの日海に飲み込まれた大和の姿が頭に焼き付いて、海を見るのがツラかった。 そして3年ぶりにこの海に来て、今私の横には死んだはずの大和が座っている。 これは絶対に夢だ。 そうに違いないと、私は思いっきり自分の頬をつねった。 「痛っ!!」 力強くつねりすぎた頬を押さえた。 目の前には、やっぱり大和がいる。 「もぉ~。麗ちゃん、何してるの?頬っぺた真っ赤だよ。」 赤くなった頬を優しく包んで、ソッと撫でてくれる大和の手はやっぱり温かかった。 「これ、夢じゃないからね?現実だからね。」 「でも…。だって、大和は…。」 「うん、3年前にこの海で溺れて死んだよ。」 「っ!?」 笑顔でそう言う大和に、言葉を失った。 死んだと言うなら、今目の前にいる大和は…。 幽霊っ!? そんなことを思っていると、体が震えた。 「海って、やっぱり怖いよね。」 「怖いなら、どうして海に入ったりしたの?」 「入ったわけじゃないんだよ。あの日帰り支度してたら、指輪落っことしちゃって。そしたら、海の方に転がってって。ギリギリ波が来てないところで止まったから、急いで取りに行ったんだ。手に取ったところで安心しちゃって、海から離れずに指輪はめてたら突然大きな波が来て流されて。皆海に背を向けてたから誰も気づかなかったし、僕も溺れて声をあげることもできなかった。で、あっという間に沖まで…。」
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