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綻びを認めた日 Side Wakamiya
なんか違うな、と。
腕の中で苦しげに悶える女を見下ろしながら思った。
セックスに違和感を覚えるようになったのは一体いつからだろう。
女は長い髪を汗で湿らせ、懸命に俺の背中へしがみつこうとする。
恥を投げ捨てた姿は滑稽でしかなく、高められていく昂りとは対照的に、頭は冷たく冴えていく。
わざとなのか、無意識なのか、皮膚に食い込んだ爪は不快な痛みを鋭く残し、赤く抉れた。
「――…ッン!」
若宮君、と、女の声が甘く呼ぶ。
背中をしならせ、熱い息を吐く。
絶頂を迎えたとき、そこにはやはり強い違和感しかなかった。
糸の切れた身体が、ぐったりとシーツに沈む。
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