1人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
隕石の襲来により、世界中が焼け野原になり、さらにゾンビの誕生によって混沌とした社会になってから2年の月日が経った。
今。
壁の外でゾンビを倒す男がいた。
「こいつら倒してもレベルあがらないんだよなぁ」
男は呟いた。
名前は藤堂啓吾。
27歳独身。
2年前にトラックにひかれ、神様に出会った…。
そしてチート能力、を手に入れた。
つまり超人と化した(2年前)
「これ、ドラゴンの息吹で、範囲攻撃すれば、めちゃくちゃ経験値溜まりそう」
ゾンビと戦う修羅の生活を送り、オンラインゲームに例えて目の前の敵と戦っていた。
藤堂の反応速度は、人間を優に超え、ゾンビすら凌駕していた。
それは、彼が脳を30%以上を使用し、常人が耐えられる許容範囲を超えて超人になることができた。
「もったいない。これだけゾンビを倒したら、どれだけ俺のキャラクターの経験値が溜まるだろうか」
本当にもったいない、と藤堂は悔やんでいた。
ゾンビの頭を片手で握り潰し、頭の中でEXP(経験値)の獲得値を計算する。
「ハイゾンビ」を一体倒した。
EXP6000獲得。
ゾンビを頭を二体同時に握り潰し、EXPを12000獲得する。
6000
6000
6000
6000
6000
「あー本当に何やってんだろ」
普通の人間なら人型の化け物を殺し続けて、罪悪感と共に精神を疲労させるはずが、藤堂は空虚な経験値の獲得を妄想していることに、嫌気を差しただけだった。
さすがオンラインゲーム廃人である。
ゾンビの屍の山ができ、魑魅魍魎とした世界がまっさらになり、壁の上でその光景を眺めていた番人達は茫然と口を開けて、立ち尽くしていた。
「終わりました」
藤堂の笑顔にさらに番人はぞっと顔面が蒼白になり、門扉を開けるために力を込めて回し始めた。
できるだけ彼の顔を見ないように番人は心掛けているようだった。
門扉が開くと、藤堂の殺戮劇を知らない人間達は歓声をあげて藤堂を要塞の内側へと迎い入れ、藤堂は10万円分の電気屋の引換券を手に入れた。
藤堂はこれで満足していた。
最初のコメントを投稿しよう!