今宵、約束の宴を

1/4
189人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ

今宵、約束の宴を

  ――…そう言えば梓、もしあの賭けであたしが勝っていたら何をくれるつもりだったの? 一緒に暮らし始めて1週間。あたしは今日も花嫁修業歴6年の腕を惜しげもなくふるう。 梓の食に煩いという脅しはまんざら嘘でもなく、事細かな注文を当然のように突きつけてくるからだ。 例えば洋食より和食派だとか、味が濃いのは嫌いだから薄味にしろとか、グリーンピースは嫌いだから絶対に入れるなとか、様々だ。 中には子供みたいな注文もあったりして、こっそり笑みを噛み殺したのを覚えている。 そしていつものようにキッチンで夕飯の支度をしていた時、何となく気になっていたことを聞いてみた。 梓はソファのアームに寄りかかり、組んだ足にノートパソコンをのせて黙々とキーボードを叩いている。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!