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今宵、約束の宴を
――…そう言えば梓、もしあの賭けであたしが勝っていたら何をくれるつもりだったの?
一緒に暮らし始めて1週間。あたしは今日も花嫁修業歴6年の腕を惜しげもなくふるう。
梓の食に煩いという脅しはまんざら嘘でもなく、事細かな注文を当然のように突きつけてくるからだ。
例えば洋食より和食派だとか、味が濃いのは嫌いだから薄味にしろとか、グリーンピースは嫌いだから絶対に入れるなとか、様々だ。
中には子供みたいな注文もあったりして、こっそり笑みを噛み殺したのを覚えている。
そしていつものようにキッチンで夕飯の支度をしていた時、何となく気になっていたことを聞いてみた。
梓はソファのアームに寄りかかり、組んだ足にノートパソコンをのせて黙々とキーボードを叩いている。
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