事件:七人目の夜

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 今日までに6人殺した。中年男性に始まり、主婦、男子中学生、女子大生、70過ぎのお爺さん、8歳くらいの女の子。  誰を殺してもあの時の様な”熱”は得られなかった。猿轡を噛ませてナイフで肉を抉っても、内臓を抉り出しても、原型が無くなるんじゃないかって位めった刺しにしても、ただただ虚しいだけだった。どこからか無意味な”作業”をしている気分だった。  そして、今日は13日目、予定の日まであと一日。今朝から携帯に会社からの電話がジャンジャンかかっている。流石に僕が出張に出た先で殺人事件が起こっているという法則に気付いたのだろう。電話に出て何も無いと言ってやってもいいけれど、帰って来いと言われることは、そして帰った先で警察の御厄介になることは間違いない。逆探知されているかもしれない。なら、もう一人くらい殺しておこう。どうせ明日には自首する身だから。  幸運にも、外は土砂降りの大雨で、テレビに映る運行状況は新幹線、飛行機、共に運休だった。神様が少しだけ時間をくれたのだと信じることにした。やってることはこの上ない邪悪な事だけど。
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