事件:七人目の夜

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 現在、午後8時。傘をさしてあちこちを歩き回っている。今頃は僕の顔写真が警察の間で公表され、各駅で人相の照合も済んでいるだろう。念のため出張先とは別の県の駅で降りて予定とは違う場所にホテルをとっているが、それにどれだけの意味があるのか。  最後の獲物を求めてさらに数時間彷徨った。すると、一組の男女が目についた。無視するか、そう思ったが、男の顔に見覚えがあった。  妻と不倫をした間男だった。どうしてここに居るのか、そんなことはどうでも良かった。  むくむくと怒りが沸いてきた。妻と連絡が取れなくなるなり別の女に乗り換えたことはどうでもいい、遊ばれてたことに気付けなかった妻が間抜けなのだ。  だが、僕が妻の中でこのナンパ男より下であったと言う事実が納得いかなかった。今でこそただの殺人鬼だが、それでもコツコツ堅実に生きてきたつもりだった。こんな遊び人に劣っていたという事がどうしても許せなかった。  最後の一人はこの男にしようと心に決めた。ほのかな”熱”が僕の胸の中で再燃し始めたのを感じた。その”熱”にうかされるように二人の後をつけた。  そして、誰かの駐車場におそらく無断駐車してあった車に二人が乗り込もうとした所で行動を開始した。  まず、車に乗ろうとする女の後頭部をナイフで殴打し、気絶させた。二人が今晩別れるとは思えなかったし、車に乗られると追いつける気がしなかった。  女が倒れ、驚いてこちらを向く間男にナイフを突きつけた。
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