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更に一週間経った、あいつの怪我は治りつつある。後リハビリを続ければ退院できるそうだ。
それに比例するように私の容態はひどくなっていく、そろそろかな。
そんな時。
「どっか行くか。」
「あと少しで退院ですよ。」
「お前も来るんだよ。」
「私の容態知ってて言ってますか?」
「言ってるんだよ。」
訳が分からない。あいつは笑っている。
「ほら行くぞ。」
「どこにですか?」
「行きたい場所だ。」
あいつに手を引かれて行く、体が泣く。
胸も苦しいけど、何か違う。
「海行くか!」
「海ですか。」
「少し遠いが丁度いいだろ。」
あいつは笑顔で言う、笑顔が絶えない人だ。
車に揺られながら行った、会話はいつも通りくだらない、しかし胸は躍っていた。
そしてやっとついた時は夕暮れ前、黄金色に光輝く海。あいつに担がれてみる海は綺麗だった。あいつの笑顔もこの色。ってあれ?なんで泣いてるの?いつも通り笑ってよ。あいつが急いで私を持って病院に駆け込む。何を懇願しているの?
私はそこで目が覚める。あれ?起きていたはずなのに。
医者が驚いた顔で私に確認をする。
「意識はあるか。」と。
「あります。」
「君はよく生きた、それは私とあの彼が保証しよう。」
「彼はどこにいますか?」
「外にいるよ。」
「私はもう死にますか?」
医者が無言になる。
「先生、私はまだ痛みを味わっていたいです、胸にある痛みを。」
「待ってなさい。」
医者が外に駆けだす、呼んでくるのかな。
医者が戻ってきた、あいつもいる。
「おい、目を覚ませ、拒否権はないからな。」
「目なら覚めてますよ。」
「相も変わらずの口調だな。」
「ふふっ。」
なぜか笑いが出てきた。
「やっと笑ったな。」
「外に出れて嬉しかったです、いびきうるさかったです、今とても哀しいです。」
「おい、やめろ、俺退院してもお前のところ行くからな。待ってろ。」
「けど、凄い楽しかったです。<お前は凄い。>」
「は?」
「やった、珍しい怒り顔と泣き顔が見れました。」
「そんなこと言ってる場合かよ!いくらでも見してやるしほかにもまだまだ楽しいことはいっぱいあるから!起きろ!」
「まだまだ青春がしたかったですよ。ありがとうございました。」
あいつが何か言っているけど、もう耳も聞こえなくなっちゃった。
「康太、お休み。」
伝わったかな?伝わっていると良いな。
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