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「全身雪花石膏(アラバスター)のように真っ白なんだ。つま先から髪の毛までね」
トーマスがほう、とため息を漏らし、興味深げに身を乗り出した。
ちょうど、シャンパンが二人分運ばれる。
「こいつよりも白いのかい?」
ガラス細工の杯に注がれた、泡の浮き出る酒を指さしながら、トーマスは続きを促した。
「ガラスのように透明って訳ではないが、血管が見えるくらい真っ白だったことは確かだよ」
聴衆に囲まれて八重歯までは確認できなかったけれど、と付け足すと、「まぁそうだろうな」と納得した表情を浮かべた。
「演技なのか、本当に苦しんでいるのかは分からなかったけれど、殆ど下着一枚の恰好で、檻の中であっちを庇い、こっちを庇いと暴れるんだ」
「なるほど、不憫だな」
「もちろん、彼女の境遇には同情するさ。でも、俺が一番胸糞悪く感じたのは、彼女が身体を捩るたび、太ももやお腹、頸もとが露わになり、見物人たちが喝采を送って、下卑た視線を送ることだったよ」
「君は正義感が強いからな」
トーマスは泡の減ったシャンパンをあおり、確信に満ちた表情を浮かべた。
「興行中止にしろ! とでも叫んだんだろ?」
図星だった。
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