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「夕飯は食べられそうかい? 今日のミルクは水で薄めてないみたいで美味しいわ」
スカーが錫のコップになみなみと注がれた牛乳を差し出した。
そういえば、昼から何も食べていない。空腹感は無かったが、猛烈な渇きを覚えてミルクを飲み干す。
甘い液体がおなかから全身に広がる。
「飲めてよかったじゃないか。パンとジャガイモもある。食べられるなら食べておきな。身体を壊したらおしまいだよ」
その通りだ。私たち見世物小屋の『怪物』は、カネ儲けができなくなったらすぐさま処分される。
『世界仰天一座』。これが私たちを管理しているサーカス兼、見世物小屋だ。キリストの聖遺物から人魚のミイラ、ナイフ投げや綱渡りといった曲芸。『怪物』の展示。とにかく世間の好奇心をくすぐる興業については何でも手を出す団体だ。
食欲はあまり無かったが、スカーの差し出したパンをミルクに浸して強引に飲み干した。
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