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スカー自身も、『ヘビ女』として異形と、曲芸を混ぜたパフォーマンスで人気を博している。
元々はどこかの富豪の娘だったが、皮膚が変形していくにつれて気味悪がられ、実の親に捨てられたらしい。
らしいというのは、わたしがこれ以上のことを聞けなかったし、聞く勇気も無いからだ。
わたし自身も、スカーに教わった知識では、ロンドンのソーホー地方の私生児だということだ。その地方は17世紀から中国人街として栄え、カレンという名前は東方の言葉で『花蓮』という字が使われるらしい。
わたしは産まれた時から髪の毛が白く、東洋ではアーモンドのような黒や茶色の瞳をしているのが普通だったようだが、真っ赤な瞳だった。赤ん坊の内は珍しがられて育ててもらったが、次の子が産まれた。両親は昼間出歩けないという子育ての面倒と資金難を乗り切るため、あっさりとわたしをこの一座に売りとばした。
だから、物ごころがついていないため、両親の顔は靄がかかったようにおぼろげで、思い出せない。
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