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俺たちも賛同していた。 そう遠くない将来、俺たちのリーダー、飯田直樹さんとイチさんこと佐橋雄一さんが新橋を去る。 彼らは岩手とアメリカで運送業に携わる。 そうなると残る俺たちものほほんと過ごす訳にはいかない。 通常の会社なら経営は社長任せ。事務職もドライバーも其々の役目を果たせば良い。 だがウチの社長は半端なく独創的だ。 俺たちに経営状況をぶっちゃけ、今後どうするべきかをみんなに問いかける。 最初からそうだった訳じゃない。むしろ何の心配もするなと保護してくれていた。 でも社長の家と会社の半分を抵当に入れるほど切迫した状況に陥ってから変わった。 俺たちも初めは戸惑ったけれど、今では自分が社長だったらとイメージしながら意見を持ち寄っていた。 どの顔も真剣そのものになり、このままいちドライバーでは終わらないと情熱を燃やす者も出始めていた。 みんながそこここで集まってはアイデアを話し合い問題点を見つけては修正する。 立ち話程度でも、そうすることによってコミュニケーションが増え相互理解が深まり、雰囲気で好き嫌いを言うことも少なくなったし、今まであまり喋らなかった人とも打ち解けた。 かつて俺と瑞穂のことで旭成会との乱闘騒ぎがあったりなんやかやで新橋は他の会社よりも団結力が強い。 そこに経営という課題が与えられ、体力的な腕っぷしだけでなく知恵を出しあい方針を決めていくという頭脳的な一体感が生まれていた。 そんな中でも俺は大友に、健太郎は広島の綿貫(わたぬき)商運に交代で手伝いに派遣されていた。
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