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思ったより激しく雨が降っていた。
雨粒が集まって水溜まりを作り、更に領海を広げようと勢いよく浸食している。
私は事務所を出て傘をさすと階段を数段降りて向かいの見学ラウンジに入っていった。
「トシロウさ~ん!コーヒーお願いしまーす!」
爺ちゃん星人3号の長谷部俊郎さんが微笑んだ。
「よおー瑞穂ちゃん!お腹がはち切れそうだなぁ!まだ生まれんか?」
「はい~。もう重くて!こんなにお腹の皮が伸びてもちゃんと戻るんですかねぇ?それが心配で。」
私の言葉にバカウケしながら俊郎さんは、私が持っていたポットを受け取って出来立てのコーヒーを入れてくれる。
その間に私は見学に来ている女の子たちに手を振って輪に混ざりお喋りに花を咲かせる。
彼女たちともすっかり仲良しになった。
初めはみんな隆也さんを一目見たいと集まった人たちだ。
隆也さんに会ってみたいと思う気持ちは良く分かる。実際彼は類い稀なハンサムだから。
でもいくら情報社会とはいえ、名前も住所も分からないのにここを突き止めるなんて、しかも来てしまうなんて凄い行動力だと思う。
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