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社長は運動を兼ねて一日に何度か所内をくまなく歩いて見回るようになっていた。 働く人間にとっては傍迷惑な話だが、俺は素晴らしいと思っている。社長がウロウロしていれば気を引き締めざるを得ない。 特にサボっている者がいるというわけではない。 ただ、社長が見ていてくれるという充実感を味わって欲しかった。 社長の存在感を感じることで会社が身近なものになり、自分も役立っているのだと感じる。これこそが愛社精神の第一歩だと思う。 更に社長にとっては社員を知ることが出来るし、何より運動になる。 医者に『運動しなさい』と言われても仕事人間には糠に釘。となると仕事と運動がセットになっているのが手っ取り早い。 社長のポッコリと突き出た腹を見やる。 「社長、瑞穂と良い勝負ですね。」 「あぁ!?………ほうか?ほんなら僕にももうすぐ生まれるかも知れんなぁ!!」 大友社長が腹を擦って笑う。 「ほんなら行くか!エース、付いてこい!!僕が産気付いたら大変やからな!!」 「はい。しっかり取りあげさせてもらいますよ。」 大友社長には逆らえない。何と言っても尊敬する人だから。
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