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何度も何度も、二匹の魚が跳ねます。
彼は顔をくしゃくしゃに歪ませて俯きました。何粒もの熱い雨をこぼした後、遠くの小魚に聞こえるほどの声量で言いました。
「俺、島を出る。がんばってみるよ」
身捨紙を流した後のような清々しい顔をしていました。
防波堤から立ち上がる彼はしっかりと前を向いていて、海を振り返ることはしませんでした。
たくさんの苦しみや後悔を味わい、身捨様に流し、こんなにも立派になったのです。
最後になるであろう彼の姿を目に焼き付け、私たちは大きく跳ねました。
風に流された水飛沫が、遠くの地に旅立つ彼の背を押してくれるでしょう。
私は知りました。
彼がこぼす雨粒は涙と呼ばれるもので、海と同じ味がするのだと。
塩辛くて、肌に刺さる。しかし温かい味がしました。
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