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何度も季節が巡り、双子は毎日同じ服を着て防波堤にやってくるようになっていました。
ある時の冬です。
私はいつもの岩陰で彼らが来るのを待っていました。
ぼたぼたと雪が降って海面を荒らし、落ち着かない気持ちになります。
しかし、いくら待てども、毎日来ていた彼らは現れません。
防波堤はうっすら雪が積もって白く、それが宵闇に隠されるまで待ちましたが、ついに足音は聞こえぬまま朝を迎えました。
何かあったのでしょうか。彼らが気になり防波堤の周りをぐるりと泳いでみましたが、手がかりは得ることができず。
この身に足があるのなら。不安に急かされるままに彼らの元へ駆けだしていったでしょう。
もしもこの海に、魚の願いを叶える神様がいるのならば。私は人間にしてほしいと願ったかもしれません。
ですがここは身捨様の海で、私の願いを叶える存在はいないのです。
この身を襲う悔しさは、彼らが流す手紙と同じ味がしました。
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