“幼なじみ”って存在

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“幼なじみ”って存在

私には生まれた時から兄妹のような存在の幼なじみがいる。 母親同士が仲が良く、家も近所(マンションだが何故か隣同士)。 私達は常に一緒に居て共に行動し、何をするにも一緒だった。 幼なじみの名前は『嵐山 樹(あらしやま いつき)』 私の記憶では、彼は老若男女問わず、常に人から愛されていた。 整った顔立ち、薄い栗色のショート髪に、薄いブラウンの瞳に切れ長な目。 パッと見は『あれ?ハーフ?』な~んて、勘違いをしてしまうほどだった。 5月に産まれた樹。 3月に産まれた私は周りについていくのが必死だった。 何をするにも遅かった私を、樹はいつも「どんくさいなマナは」と呆れながら手を差し伸べてくれていた。 もの心ついた時から、樹が一人で居るのを見たことは無い。 明るくて、面倒見もよく、スポーツも出来て、頭もいい。 だから、何時も男女問わず沢山の友達が彼の周りにはいた。 私、『須堂 マナ』高校二年生はというと……… 普通。 何処にでも、居るような普通の女子高生。 自慢できるのは、胸の辺りまである艶々の黒髪。 あとは、毎日ヘアアイロンで整え、眉が少し隠れる位にカットされた、命と同じ位に大切な前髪くらいだ。 季節は四月の終わり。 教室の窓の外に目を向ければ、桜の花も散り、あたりはすっかり新緑の季節。 若葉が風に吹かれると、さわさわと音を立てていた。 「おーい、樹~っ!一年生がお呼びだぞ~!」 朝も早くから御苦労な事で、HRが始まる前から、樹宛にお呼び出しがかかった。 同じクラスの男子が教室の入口で大声で樹を呼ぶと、窓際に座って数人の男子達と談笑していた樹はその声に反応するとだるそうに立ち上がり、後頭部を軽く掻きながら、ゆっくりと呼ばれた男子に向かって歩いて行く。 「あー…、今行く」 樹は心底だるそうに言っていた。 そんな姿を見ていた私は、真ん中の一番後ろの席から羨ましい眼差しを樹に向け、だるそうに歩く樹の姿を視線で追っていた。 今日も樹は “ 誰かからの告白 ”を受ける。 「……羨ましい奴〜…」 面白くな〜い。 なんで樹ばっかり…。 羨ましい…。 そんな想いを心でぼやきながら、私は机に肘をつき、右手に顎を乗せ、樹の姿を見ていた。 入口で樹が来るのを待つ可愛らしい一年生。 頬はほんのりピンク色に染まり、胸のあたりで左手を右手で掴み、緊張からか小刻みに震えていた。 肩につくかつかないか位の髪はフワフワしていて、毎日アイロンでセットするの大変だろうな〜なんて思いながら、私は呑気に彼女を見ていた。 彼女の元へと歩み寄っていく樹に、悔しさを感じていると、私の中学からの友達『原田 アリサ』が寄ってきて私が座っていた前の席にドスンと座ると、腕組をしながら話し掛けてきた。 「相変わらずのモテっぷりよね~、中学の時も凄かったけど、高校でも一週間に一回は女子から呼び出しされてるよね〜」 アリサは樹と一年生の姿を見ながら話しかけてきた。 「ムカつく〜…私だって、誰かから告白されたい!!モテてみたい!!何とか夏休み迄には、彼氏作りたい!」 アリサの言葉に反応した私は握り拳を作りながらアリサに叫ぶ。 「マナだって、そんなブッサイクなわけじゃないんだし?元はいい方だしさ、誰か格好いい人見つけて告白すればいいじゃん!」 アリサがニッコリ笑って親指を立てた。 「それに、待ってるだけじゃ恋人はやってこないぞ若者よ」 アリサは自分の言葉にうなずきながら、私の肩をポンポンと軽くたたいた。 「なんか、ちょいちょいトゲあるな…まぁ、いいけど…ありがとう!さすが親友!嘘でも嬉しい!!」 「嘘って……オイ、オイ…」 アリサは苦笑いを浮かべた。 「早く“彼氏”欲しいなぁ~…一度でいいから誰かに“告白”されたぁぁい…一緒に海行きたぁいっ!」 自分の机に額をを付けて、『彼氏欲しい~』って唸っていると… べしっ! 誰かに後頭部を叩かれた。
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