episode223 奪い合い①

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「ウ……アアッ……」 この場合 涙はなんの意味も持たない。 望んでいるのは僕で 抵抗しているのも僕だからだ。 なんとか身を起こし 四つん這いの体勢をとる間に血の気が引いて 指先まで冷たくなり震える。 征司はそんな僕を見下ろしたまま 微動だにしなかった。 快感の為に屈辱を受け入れるのか。 屈辱を受け入れる事自体快感なのか。 僕という人間を見定めるみたいに――。 やっとのことで 僕は息を詰め征司の足に手を伸ばした。 自分に言い聞かせる。 欲しいんだから今はこれが最善なのだと。 頭を低くして唇を近づけると ゴクリ――恥ずかしい音を立てて喉が鳴った。
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