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くれるもんってつまりカラダかよ。なんでそんなに簡単に言えるんだろう。もしかしたら両思いだったかも知れないのに。大人は難しい。ちょっと大人に近づいてうれしかった気持ちはどこかに行ってしまった。好きだから一緒にいる。そう無邪気に言える子どもの方がずっと楽だ。
「だからおまえが俺を受け入れるんなら逃がさねぇって決めた」
「待て! あれは脅しに近かったぞ!」
「こっちだって必死だからな。二度も逃げられたんじゃかなわねぇ」
俺は二匹目の魚かよ。偉そうに言うなよ。俺はすげぇフクザツな気分だ。でも、やっぱり武市も、身体だけじゃなくて気持ちごと全部欲しかったんだよな。
うまく誤魔化すことだってできたはずなのに、武市はばか正直に白状してくれている。俺なんか武市に比べたら、まだ半分以上はガキなのに、それなのに対等に真っ向から話してくれるんだ。
なんで、そんなに男前なんだよ。悔しいけど認めざるを得ない。
「俺に惚れたって言った? オヤジより?」
「間違いなく惚れてる。悔しいが認めるしかねぇ。が、もうこの世にいない一とは比べられねぇよ。あいつは俺が初めて惚れた人間で、おまえは俺が今いちばん惚れてる人間だ」
もし比べて俺のほうがいいなんて言われても、オヤジを貶められたみたいに感じて不快になっただろう。俺は思わず笑ってしまった。
俺は武市と家族になりたかった。あのころの気持ちとは少し変わったけど、一緒にいたいって気持ちは同じだ。
「武市と一緒にいる……」
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