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少年、マモルこと帝倉(みかぐら)守(まもる)は、サッカーの名門である長田(おさだ)高校のサッカー部に所属している。しかし、一般受験で入学した彼と、推薦で入った強者達とでは差が大きく開いていた。その差を埋める為に、雨天にも拘らずサッカーの練習に来たのだ。
少女、ルーコこと竜崎(りゅうざき)龍子(りゅうこ)は、長田高校サッカー部のマネージャーを務めている。しかし、どういう訳か手には鋏を持ち、ゴールネットを切り裂いていた。これはサッカー部員であるマモルとしては見過ごせない蛮行であり、「斯くして」と口から疑問の声が流れ出る。
斯くして斯様な行為に及んだのだろうか。
ルーコはサッカー部に恨みでもあるのだろうか。
「貴女は、確かサッカー部員だったわね」
その声は女子らしく高く、しかしどこか覇気がない。平坦とした、ロボットのような声が、マモルに激しい恐怖を与える。
それは恐い。
それは怖い。
同じ部のマネージャーが、手に鋏を持ってゴールネットを切り裂いていたのだ。その矛先が自身に向いたものではないと理解していても、対峙するだけで縮み上がるというのが人間というものである。
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