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ヘボサッカー部員のセメルこと王蔵(おうくら)攻(せめる)は無人と目される早朝を狙い、長田(おさだ)中学校のグラウンドへサッカーの練習に来ていた。しかし、そこで奇妙珍妙なワンシーンを目撃することとなる。
何と、女子マネージャーのマネコこと虎(こ)玉(だま)愛猫(まなこ)が、あろうことかサッカーゴールのポストに向かい、堂々と放尿していたのだ。裸の股間から放たれる放物線は、綺麗に弧を描いていた。しかし、斯様なところに見惚れている場合ではない。
「あの、君。一体、何をしてるの?」
「ふぇら? おしっこですが」
マネコは可愛らしく小首を傾げる。セメルは彼女を写メにより撮影したい衝動を抑えながらも、年寄り臭い説教を続けた。
「それは解るけど、何で斯様なところで斯様なことを」
「ふぇらら? んー、一度やってみたかったという気持ちが強いですかね。ほら、最近だと野ションしたくらいでも、警察が何かと五月蝿いじゃないですか」
マネコは再度、可愛らしく小首を傾げる。セメルは彼女を動画により撮影したい衝動を抑えながらも、年寄り臭い説教を続けた。
「いや、それは五月蝿くもなるでしょ。むしろ、そこは警察にしっかり注意してもらわないと」
「ふぇららら? 何故ですか? 野外で小便をしたくらいで、何か不利益が生じるとでも? 昔は斯様なものは普通だったじゃないですか。今は何でもかんでも問題視しすぎではありませんか?」
マネコは三度、可愛らしく小首を傾げる。セメルは彼女を絵画により表現したい衝動を抑えながらも、年寄り臭い説教を続けた。
「いやいや、それは通らないよ。だって、小便っていうものは基本的に、臭くて汚いものだろう。排泄物だからね。それに、君みたいな可愛い女の子のそれなら歓迎されるかもしれないが、可愛くない女の子や僕みたいな野郎だったら拒否されるっていうのが、世の理というものなんだよ。それゆえに、君みたいに可愛い子にもそういう行為をやめてもらうことにより、世界の均衡を」
「か、可愛いだなんて、斯様な」
マネコは真っ赤になった顔を、掌により覆い隠す。こういう挙動もまた、彼女の可愛らしさに繋がるのだろう。しかし、照れている場合ではないだろう。覆い隠すべきは上ではなく下だろう。お後が宜しいようで。
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