見上げた先には恋がある

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 なるほど、変な噂で迷惑被った奴がいたっていうのは佐竹自身の事だったのか。  二人の小競り合いの様子を、ドアの内側にピタリと耳を引っ付けて聞いていた。 「それにな、木崎はやめておけ、馨」 「っ、お前には関係無い!」 「関係? 大いにあるね。木崎が俺に似ているから、お前はあいつに惚れたんだろう?」  ――、ド直球に聞いてくるな。 「でも木崎は俺よりも見込みは無いぞ? あいつは普通なんだ。木崎に入れ揚げても簡単に捨てられるだけだぞ?」 「うるさい、彼をお前と一緒にするな!」  水無月の金切声に佐竹が何だと、と怒鳴る。 「彼はお前とは違う。僕の性癖を知っても彼の態度は少しも変わらなかった。恭介は親友の振りをしながらも、影では僕がゲイだってことを馬鹿にしていたじゃないか!」  いつもの飄々とした口調とは違う、水無月の心からの慟哭が鋭く胸に突き刺さる。 「たかが一回寝た女と子供が出来たからって当てつけるように結婚して! 友人代表のスピーチくらいなら我慢出来たよ。だけど二次会で恭介は皆の前で僕に言ったよね? 『嫁の女友達を紹介してやるから童貞捨ててこい』って、『男じゃなく女の味を知ったら、お前も少しはまともになる』って!」  あまりの酷さに頭がクラクラする。こんな奴を先輩と慕っていた自分が情けなくなった。
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