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佐竹は立ち上がってびっくり顔で俺を見ていた。水無月は囁くように、
「……全部聞いたって、……どこで?」
「トイレの中」
「――トイレの中っ?」
二人の驚いた声が綺麗にハモる。それすらもムカつく俺はどうやらかなり水無月に本気みたいだ。
「あんたが今夜、この部屋に来て水無月さんに乱暴を働くことはわかっていたからな。だから隠れて様子を伺っていたんだ」
「乱暴って、何を言うんだ。俺はお前のために馨に忠告しに来たんだ。木崎は将来のある奴だから邪魔をするなって」
「忠告? そんな先輩風なんか吹いていなかったけど? それよりも、あんたの浮気が原因で今は奥さんと別居中で大変だそうじゃないですか。夜の相手が調達できなくて溜まっているから水無月さん相手に一発ヤろうとでも思ってここに来たんすか?」
グッ、と黙った佐竹が拳を握りしめる。
「佐竹さん、あんたの価値観をこの人に押しつけるなよ。あんたからしたら同性を恋愛対象にしているこの人は有り得ないのかも知れないけれど、だからと言ってあんたが好きだと言ってる人をオナドール代りにするほうが俺からしたら異常だ」
佐竹が顔を真っ赤に染めて俺を睨み付ける。
「俺にこの人を取られて悔しいのはわかるけどな。でも今のあんたはお気にいりのおもちゃを奪われたガキと一緒だ」
「じゃあ何かっ!? お前は馨を女みたいに愛せるっていうのか!?」
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