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佐竹が己のプライドを奮い起たせて言った言葉に、俺は呆れたように嗤いを乗せると、
「男とか女とか今更関係ねえの。俺はこの人が、水無月馨って人が好きなんだよ」
なんの気負いもなく言った俺の台詞に佐竹はポカンと口を開いた。そのだらし無い不抜けた顔を睨みつけると、
「という事だから、そろそろ出て行ってくれますか。それとも、これから俺達が愛しあうところが見たいですか?」
ベッドの上で水無月の肩を抱き寄せた。彼もうつむき加減ではいるものの、俺の胸に体を預けて佐竹の様子を覗っている。佐竹はそんな俺達に何かを言おうと口を開きかけたが、すぐに唇を真一文字に結び直すと黙って部屋を出て行った。
「……あの、……木崎君」
佐竹が居なくなってしばらくして、水無月は蚊の鳴くような声で俺の名前を呼んだ。
全く、なんて不安そうな顔をしているんだ。ほっぺたばかりか鼻の頭まで赤くして、今にも泣き出しそうで、そして……。
可愛いじゃないか。
「どさくさに紛れて告っちまったけれどさ、さっき言ったことは本当だから。俺は水無月さんが好きだ」
はっ、と水無月が息を呑んだ。その表情はまるで信じられないと言っている。俺は笑いながら、
「先に俺を落とすって言ったのは水無月さんだろ? そのとおりになったのに嬉しくないのか?」
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