見上げた先には恋がある

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「それは嬉しいけれど……。でも、どうして? だって木崎君はノンケで……」 「確かに俺は女好きだけど、誰でもいいってわけじゃない。さっきも言ったろ? あんただからいいんだよ。それに本当のあんたの事をもっと知りたくなったんだ。大人しくて自己主張が苦手で、好きな相手にとことん尽くしてしまう黒髪のあんたの事を」  水無月の瞳が大きく開かれる。どうして知っているんだと言葉も無く聞いてくる彼に、 「初めて会った時から違和感があったんだ。この一年のメールや電話で想像していた姿と顔を合わせてからの印象があまりにも真反対だったから。五年前の事を聞いてわかったんだよ。もしかしたら奔放なあの姿は演じていたんじゃないかって。なあ、水無月さん。俺に種明かししてくれないか? なぜ毎朝、あんなことをしていたんだ?」  水無月は乱れた前髪の隙間から俺の顔色を窺いながら重い口を開いた。 「木崎君、実は僕らはあの喫煙室で会ったのが初めてじゃないんだ。ほら、前に一度、君が僕の会社を訪ねてきてくれたことがあっただろう? あの時は会えなかったけれど、偶然に帰り際の君の姿を見たんだよ」  以前、急に体調を崩したリーダーに変わって俺が打ち合わせに訪ねた時か。 「君は電話の声で想像した通りに実直で凛々しくてスーツ姿も決まってて……。あの時、僕は君が一目で……、好きになった……」  水無月が急に耳まで真っ赤にして俯いた。
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