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それを言うなら俺もだ。いつも受話器の向こうの水無月は細やかにさりげなく俺を気遣ってくれた。それが電話やメールの文章から見える度に、特別な繋がりを感じていた。
俺は、ふうっと頬を緩ませると、
「何だ。結局、俺達は顔を合わせる前に互いに好き合っていたんだ」
えっ、と顔をあげた水無月の唇に素早くキスをした。微かに触れ合うだけのキスなのに水無月はますます顔を赤らめて、バスローブから覗く胸のあたりまで一気に朱に染めた。
「ああ、これですっきりした。馨のことは好きだけど、ちょっとあの弾けた性格は付き合うのに大変そうだと思ってたんだ。だけど、俺の理想に合っていて良かった」
水無月を抱き寄せて、すん、と右耳の下に鼻を押しつけて匂いを嗅ぐ俺に、
「ま、待って木崎君。今、僕の事を馨って呼んだ? それに理想って……」
「俺の理想は清楚で大人しいけど芯のしっかりした黒髪の子なんだ。まあ、茶髪のふわふわも可愛いけど」
ボディソープの甘い香りが体温で温められて霧散していく。俺はそれを深く鼻腔に吸い込んで長く息を吐き出しながら、衿元を割って彼の素肌の胸に舌を這わせた。
「馨、とても温かい」
ツンと固くなっている乳首の先をちろりと舐める。ふぁ、と何とも奇妙な声をあげて、
「だ、から、どうして馨、って……」
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