殺人衝動

1/1
前へ
/12ページ
次へ

殺人衝動

 人間には、三大欲求と呼ばれる欲望がある。誰もが知っていて、日々その欲求を満たすために生きていると言っても過言ではない。  食欲、睡眠欲、性欲――。  そんな当たり前の欲求を、当たり前の様に満たす事は簡単な事なのだが、僕にはそれ意外に最重要でどうしようもない欲求がある。  殺人欲――。  殺人衝動と言い換えてもいいが、この欲求を満たす事は、現代社会において簡単な事ではない。食欲を満たしたければ食事を取ればいいし、睡眠欲を満たしたければ寝ればいい。性欲を満たしたければ恋人や風俗などを利用すればいい。しかし、殺人衝動を満たすには、殺人を犯せばいい――などと、単純に行うことが出来ない。現代社会ひおいて、殺人は重罪。逮捕されてしまう。  しかし、一番厄介な事は、この殺人衝動が欲求であり、自分自身で制御出来ない事である。そもそもが、欲求事態ある程度制御することが出来るが、完全に管理する事は出来ない。  とにもかくにも、僕は人を殺したくて仕方がないのである。  さて、今日もこの殺人欲を満たすため、僕は街へと繰り出す。  街には、人がゴミの様に溢れている。世界人口は年々増え、食料問題やエネルギー問題などの課題点が山積みなのだが、僕がこれから行う行為が人口増加問題の解決策――とまでは言わないまでも、ある程度の間引きとなっていると思うと――。  何て、殺人に対して罪悪感や負い目を僕は感じていない。人間が食事を取る事に対して、食物に感謝こそすれ、命を頂く事に対して罪悪感を感じない様に、殺害相手に感謝こそすれ、それ意外に何も感じていない。  人間には、いつかは死ぬのだから――。  そんな事を考えているうちに、今日のターゲットが決まった。  「今晩は。君は、家出少女? お腹空いてない? よかったら飯でも行かない?」  少女は、大きなバックを抱え、如何にも――って感じで駅前のベンチに座っていた。僕は殺人をする時は、こういった家出少女をターゲットにしている。年間、何人の行方不明者がいるのか知らないが、こういった形で犯罪に巻き込まれしまうのだろう。  家出少女も、声を掛けられのを待っていた様で、すんなり了承しました。  さて、この家出少女に感謝して、最後の晩餐にでも連れて行くとしますか。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加