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単発の長距離輸送は、物にもよるがほとんど軽自動車の運送屋が幅をきかせている。
バイク便は都市部の混雑している場所での活躍に期待され定期便や、メール便が多い。しかも、料金も高額だからさすがに長距離依頼をするメリットはない。
何度もガソリンスタンドへ給油に寄らなければならないしな。
これも長年の付き合いであるからだろう。有り難いことだ。
都内からそろそろ県境にさしかかろうとしていると。
コン
フルフェイスのヘルメットに軽い衝撃があった。
きた。
奴らが多くいる地域に入ったのだ。過ぎ去る景色はビルから木々に変わっている。
前方はライトに照らし出されているが、前を走る車はいない。サイドミラーで確認をしても、後方で走る車のライトは確認できなかった。
ゆえに、俺だけが目的地に繋がるこの道を走っている。
単調な代わり映えのしない道。瞼が落ちないように、フェイスガード部分のシールドを上げて直接風を浴びた。
スコン
再び首にかかる圧力。
また、きた。
俺はフルフェイスにしがみつく幽霊を想像した。しがみついたまま、凄惨な笑顔でノックをするというように。
…………。
自虐的に想像をして眠気を吹き飛ばす作戦は、ある意味成功したが背筋がうすら寒い。
どうしよう。公道の脇にあるトイレに入れなくなりそうだ。
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