見え始めた色

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見え始めた色

帰宅部は家に帰るのが活動内容。 昔遠足で『帰るまでが遠足です』と校長が言ってた。それに似ている。 家に安全に帰れれば私も部員として役目を果たしたと言えよう。 授業中寝ていたけどまだ眠れそう。欠伸を噛み殺して教室を出た。 下駄箱に上履きを入れて代わりにローファーを出して履く。 「…あ」 「柚木さん。今帰り?」 目線の先にいたのは昼に出会ったアイスココアの人。これから部活だと分かる服装。手にはバスケのボールまで持ってる。ふうん…バスケ部だったのか。 「俺の名前分かった?」 「あのアイスココアの缶がポイ捨てかゴミいきか、それと同じくらい興味ない」 「柚木さんの缶を知らない男に売った、て言っても興味ない?」 コイツ試合で誰かと激しくぶつかって頭を強打したんだ。そうじゃなければ天然バカ決定。 「そんな冷ややかな目で見なくても、缶はちゃんとごみ処理されてます」 「あ、そう」 「それで、俺の名…」 「おい智也!部活始まるぞ!」 「今行くよ。ね?意外と普通の名前でしょ」 なんでここでにっこりと笑うのか分からないけど奴の名前は分かった。知りたかったわけじゃない。言ってしまえば事故みたいなもんだ。 「さよーなら」 「また明日ね」 また明日? 冗談じゃない。興味のない人とつるむ気は全くない。 だけど嫌なものを感じ取った。私はあの智也とかいう奴にペースを乱されそう。そんなの本気でやめてほしい。 私の人生の時間をどう使うかは私だけが決めていい問題で、智也なんて他人中の他人だろ。 肺に充満してしまった嫌な空気を吐いた。ほぼ何も入っていない鞄をぎゅっと握り直しまっすぐ前を向き帰宅することにした。 あんな奴関係ない。
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