見え始めた色

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通学ラッシュ。あちこちで『おはよう』の声がする。 毎朝言わなくてもいいのに。言わなくても朝は朝だ。 「柚木さん、おはよう」 「…ウザい」 「今日も不機嫌だ」 また智也は笑う。噂で不機嫌な女として有名な私になんでいきなり関わる。 こっちは本気でウザいんですけど。 「朝練ないから会えるかも思って。そうしたら本当に会えた」 「はいはい」 「7月入るとあっという間に暑くなうよね、柚木さん夏好き?」 「大嫌い。アンタと同じくらいウザくて嫌い」 「うわー、傷つくし。俺は柚木さんと友達になりたいだけだよ?」 『友達になりたい』 その言葉に反応し足が止まった。目線を智也に向け、睨む。 「これ以上入ってくるな。一歩でも入ったら、殺す」 危険人物と認識。 私の世界に入れてはならない。ごちゃごちゃした理由は不要。入ってくるつもりなら本気で殺してやる。 速足でその場を去った。その際何人かと肩がぶつかったがよほど私が不機嫌、あるいは怖かったのか誰も声を発することはなかった。 「ふう…柚木さんは変わっていかないなあ。ねえ夏美」
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