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極力、振動を伝えないよう慎重に階段を上がり、普段より時間をかけ辿り着いた我が部屋。いつもなら窓から射し込む陽射しに迎えられる1Kの狭い部屋が、今朝はUFOが影になってしまい暗いお出迎えだ。しかも、入るなり妙な気配を感じた。いや……気配と言うよりも、声だな。
「……おいおい。朝っぱらから何だよ」
白い壁を隔てた隣室から聞こえてくるのは喘ぎ声。つまり、アレを致している声だ。しかも、けっこう感じちゃってるのか声がデカイ。恥じらいなんて微塵も持ち合わせていない、欲望丸出しの男の喘ぎ声だ。……たぶん、窓でも開いているんだろうな。外に居た時から聞こえていたけど、まさか隣の部屋からだとは思いもしなかった。
「やれやれ、こっちはしばらく相手がいねーのに、羨ましいことで」
軽く皮肉をぼやき、背負ったままだった少年宇宙人を部屋の真ん中に下ろす。買ってきた消毒液やら入った袋を足下にあるテーブルに置き、もう一方の弁当やらが入った袋を持って小さな台所に向かう。食品を所定の位置に収め、部屋に戻ってくると、少年宇宙人は下ろした場所に立ち尽くしたまま顔を真っ赤にして声の聞こえてくる壁の方を見つめていた。まあ、見るからに純情そうだしな、こんなあられもない声を聞かされたら恥ずかしくもなるよな。
しかし、その姿を見て気がついた。このいたいけな少年は宇宙人なんだ。隣には男が住んではあるが、そこにはさっき金髪の宇宙人が乗り込んでいった。この声がどっちのものかは分からんが、これは男同士でヤってると言っても、相手は宇宙人だってことだよな。
え……? なに? もしかして、こいつら地求人の男とヤるために来てんの?
そんな疑問が湧き起こり、チラッと少年宇宙人の方に視線を向ける。すると、バッチリ目が合い、少年宇宙人は咄嗟に目を逸らしてきた。そして、モジモジと指を絡ませ、チラチラと盗み見るように俺の方に視線を向けてくるのだった。
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