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もしかしたら、こいつは何かを期待しているのかもしれない。だが、おそらく俺ではそれに応えることはできないだろう。さっきの「羨ましい」なんて愚痴で、変な期待を持たせてしまったのなら悪いことをしたな。なんて考えながらも、一先ず擦り傷の治療をすることにした。
「おい。傷洗うから、こっちに来い」
これ以上期待を持たせないために、少しキツめにせっついてやる。ぼんやりとしていた少年宇宙人は、その声にハッとし、慌てて風呂場まで駆けてきた。
バスタブに立たせ、水洗いのためにシャワーを手に取るが、胸にある広範囲の傷を洗おうとすると、どうやっても服を濡らしてしまうな。
「おい、濡れると面倒だから、その服脱げ」
またもやキツく言うと、あわあわと光沢あるつなぎを脱ぎ始める。だが、脱ぎ終えた後の姿に俺は唖然としてしまった。
つなぎを受けとり濡れない場所に置き、身体を向き直した際に視界に入ってきたのは裸の少年。しかも、なかなかに男らしいモノをぶら下げている。いや、今それは関係ない。脱げとは言ったが、全部脱げとは言ってない。けど、預かった中にパンツみたいな物はなかった気がしたが。
「……な、なあ。お前、パンツ穿いてないのか?」
そう尋ねてみれば、
「パンツ……って、なんですカ?」
と、キョトンとした顔で聞き返してきた。下着だと説明しても、その顔は変わらない。ええっ? もしかして下着が存在するのは地球だけとか? 文化の違いに驚かされた俺は、宇宙人の服の概念やらを尋ねたりしながら、傷口にシャワーの水を当てていた。
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