お隣のトーゴさん

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「……アノ。少し、お聞きしても良いですカ?」  膝に絆創膏を貼り終わり、傷の範囲が広い胸にガーゼを貼っていると、これまでじっと痛みに耐えていた少年宇宙人がおどおどと聞いてきた。 「ん? なんだ」 「お名前を伺っても良いですカ?」 「あっ? 名前? 統吾(とうご)だ」 「トーゴさん……。あ、ボク、ミルトって言いマス」 「ふーん。ミルトか……」  俺の名前を噛み締めるように呟く少年宇宙人ミルト。一方、俺の方はあっさりとその名を受け流した。 「さて、これで良いだろ。お前も用があるんだったら、もう行っても良いぞ」 「エ……、でも、服ガ」  治療が終わり、出て行っても良いと促すが、肝心の服がまだ水に浸かったままだった。今から洗っても乾くまでは時間がかかるよな。しかも、太陽の光りも遮られているし。さて、どうしたものかと考えていると、ミルトがモジモジと指を絡ませ、俺の方をチラリと見た。 「アノ……。まだ、少し痛むので、……ここで休んでいても良いですカ?」 「休む? まぁ、別に構わないけど。俺、これからシャワー浴びたら寝るつもりだから、お前の相手はできねーぞ」  “何か”を期待しているのかもしれないミルトをできる限り傷つけないように、やんわりと断る。だが、それでもミルトは嬉しそうに顔を綻ばす。 「あ、大丈夫デス。ボク、大人しく休んでるので、気にしないでくだサイ」  そう言うと、腰掛けていたベッドからスッと立ち上がり、ちょこんと床に座り込んだ。俺が寝ると言ったからだろう、寝床を即座に明け渡してきた。何だろう、このいじらしい姿。 「まー、テレビでも観てろ。で、冷凍庫にはアイスもあるし、棚にはスナック類もあるから、適当に食ってても構わないぞ」  ぞんざいに扱おうとした罪悪感からか、今度は逆に過保護な感じになってしまう。 「ありがとうございマス」  そして、あどけなさの残る笑顔が眩しい。  ミルトを初めて見た時に感じた感覚。それが再び胸を襲い、俺は妙な感覚を疑問に思いながら風呂場に向かい、シャワーで夜勤の疲れを流していった。そして、ちょこんと床に座り、テレビを観ているミルトを眺めながら布団にくるまった。
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