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「消した? どういう意味だ?」
「そのままの意味デス」
そう言って、ミルトは近くにあったチラシを自分の手の上に乗せ、俺の目の前にかざした。
「……おぉ。マジか」
一般的な雑誌程度の大きさのチラシが、何の力も与えられることなく小指の爪サイズに粉砕された。それだけでも驚きなのに、粉砕され紙のた欠片は雪が溶けていくみたいに跡形もなく消えていったのだ。
「コレはボクたちの星の技術で、手に触れた無機物を自分の意思で消すことができるんデス」
ミルトが細い腕を突き出し、手首に装着している銀製の腕輪を見せつけてくる。どうやら、この腕輪の力らしいが、無機物を消すってどういった状況で必要なんだ?
「……でもさぁ。そんな技術、どこで役に立つんだ?」
素朴な疑問に、ドヤ顔だったミルトが「さあ?」と、自分でも用途を理解していないような返事をかえしてくる。
「で、でも、この腕輪には、もっと色んな機能があるんですヨッ!」
俺が向けていた懐疑的な視線が、自分をバカにしている物にとれたのか、ミルトは鼻息荒く聞いてもいない腕輪の機能を早口で説明し始めた。
まず、ミルトは指先で腕輪の中央にある緑色の石に触れた。すると、その石から映像と文字が宙に浮かび上がった。それはSF映画やなんかで見る未来的なホログラム映像そのままだった。そして、今度は宙に浮かび上がった映像に指で触れ、そこに映る画を次々と変えていった。
これには素直に感動し、映し出される画を何枚か見せてもらった。知らない景色や生物、それに知らない文字の形状に、地球とは明らかに違う文化を垣間見た。
「なぁ。お前、本当に宇宙人なんだな。……でさ、お前ら地球に何の用があって来たんだ?」
床にぺたんと座り込み、楽しそうに映像を見せてくるミルトに、ささやかだが核心的な疑問をぶつけてみる。「あっ」と、小さく声を上げたミルトが、映像から目を離しこちらに顔を向けてくる。
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