84人が本棚に入れています
本棚に追加
「ボクたちは、子作りをするために地球にきましタ」
「子作りかぁ」
あまりにあっさりと当たり前のように言うもんだから、一瞬信じてしまいそうになる。だが、隣室からの聞こえる声に、すぐさまそれが疑問に変わり、謎を深まらせた。子作りが目的なら、なぜ男同士でヤっているんだ。謎はさっぱり解けず、再度聞き返した。
「いや、でも、隣のヤツは男だぞ。……もしかして、お前の星では男が妊娠するとか言わないよな」
少しばかり冗談めいたことを言ってみるが、ミルトは真顔で頷いた。
「ハイ。ボクたちの星では男性が妊娠します。でも、ボクたちは妊娠できまセン」
冗談を冗談で返してきたのかと思った。しかし、ミルトは真剣な面持ちだ。けど、その答えは矛盾もしていた。
こいつが何を言っているのか、何を信用して良いのか分からず、うちにある困惑が「はぁ?」と、大きな声になって出てきてしまう。俺が理解できてないと察したのか、ミルトはさらに言葉を重ね、読めない文字が連なる映像を交え、『子作り』について詳しく説明をしてきた。
「……つまり、お前らは地球人の男を孕ませるために来たってことなのか」
これでもかと言うほど驚いてみせると、ミルトは「ハイ」と、何とも爽やかに返事をかえしてくる。
聞かされた話は奇想天外だった。ミルトの星は男しかいない星で、男同士が結婚し家庭を持つらしい。一応、遺伝子的にはオス型とメス型に分かれていてメス型が子供を産むのだが、その数は非常に少なく子孫繁栄が難しいのだという。そこで、メス型と似た遺伝子を持つ地球人男性を伴侶とするために、わざわざ遠い星からやって来たらしい。
しかし、これで隣室の声の謎は解けた。今は落ち着いているが、隣のヤツは今まさに宇宙人に孕まされているって訳だ。いやはや三十年生きてきて、これほど驚いたことはなかった。いやー、ホント宇宙ってのは未知が広がってるんだな。
最初のコメントを投稿しよう!