お隣のトーゴさん

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 それは金色の髪をした王子様風な男。ソイツは地上に降りた宇宙人が道路を四散していくなかで、一人だけ立ち止まり何かを見上げていた。何となく視線を追ってみると、そこにあったのは俺の住んでいるアパートだった。  ジッとアパートの一角を見つめる王子様風な宇宙人。何を見ているのか気になり、様子を窺い見てみた。だが次の瞬間、、宇宙人が膝を折り、僅かに身体を屈ませたと途端、俺の視界からヤツの姿は消えていた。 「うおっ! マジかっ!?」  微かに砂ぼこり舞う地上から視線を上げた先、アパート三階のベランダに金色の髪が光って見える。あの宇宙人は特大のジャンプをしたのだ。全くの助走もなく、バトル漫画の如く、自身の脚力だけで地上から三階まで跳んだ。  あれ? ……あそこ、俺の部屋の隣じゃねーか。って、なんかスゲー情けない悲鳴が聞こえてきた。まあ、そりゃそうだよな、突然知らない男が乗り込んできたら悲鳴の一つや二つあげたくもなる。ましてや、それが宇宙人なら尚更だ。  何度か顔は合わせたことがある程度の隣人の身を案じながらも、壁を隔てただけの俺の部屋に戻っても大丈夫なのであろうか? 大して知らない相手のことより自分の身の安全の方に考えがいく。けど、そんなことを考えながらも、襲い来る睡魔には逆らえず、俺の足は帰宅に向かい歩き出していた。 「わっ」  宇宙人が乗り込んだ場所を見上げながら一歩踏み出した瞬間、可愛らしい声と共に妙な衝撃を感じた。それは何かがぶつかった衝撃で腹部を中心に伝わってくる。しかし、それほど固いという感触でもなかった。何事かと視線を落とすと、足下に地面に尻餅をついた少年の姿があった。少年は驚いたような怯えたような顔をし、薄茶の髪と同じ色をした大きな瞳で俺のことを見上げていた。
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