お隣のトーゴさん

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「あぁ、わりぃ。つい」  ぱっと手を離すと、指に絡まっていた髪がサラリと落ちていく。そのあっさりとした流れ方に、なぜか名残惜しい感覚を覚え、無意味に見下ろし続けてしまう。 「…………」  妙な感じを受ける少年宇宙人のこともだが、どうして宇宙人たちが地求に来ているのかも気になる。けれども、同時に布団も恋しくなってきてしまう。目の前の疑問を解決したい欲求よりも己の身体の欲求を選んだ俺は、軽く声をかけ少年宇宙人の横を通りすぎた。  少年宇宙人と別れ、未だ数を増やしていく宇宙人を横目に見ながら、二、三歩進んだ時だ。 「ぎゃんっ」  突然、後方から何かが倒れる音と、聞き覚えのある声が聞こえてきた。それは悲鳴のようで悲鳴ではない、情けない声だった。なんとなく予想はついたが、俺はそろりと振り返り声の主を捜した。 「ああ……やっぱり」  予想通り、そこには道路の真ん中に倒れ込んだ少年の姿があった。それはもう見事にべったりと地面に倒れ込んでいた。しかも、なかなか起き上がらない。それを心配したのか、後ろを歩いていた紳士風の宇宙人が近寄り様子を伺っていた。  紳士に手を添えられようやく起き上がった姿に安堵し、俺はこのまま帰ってしまおうした。だが、その様子がなぜか気にかかってしまい、気がつくとまたもや足が勝手に動いていた。 「おい。大丈夫か?」  自分でも分かるくらいに、ぶっきらぼうな言い方だった。その声に少年宇宙人はビクンと肩を跳ねらせると、勢いよく振り返ってきた。俺の姿を捉える大きな瞳には、じんわりと涙が滲んでいた。 「あ、あ、……だ、大丈夫デス」  たどたどしく言うが、そばまで行ってしゃがみ込むと、ヤツの瞳を潤ませる涙の理由が見てとれた。 「大丈夫そうじゃねーよな。そんな胸が開いた服着てっから、けっこう擦りむいてるな」  豪快に転けた結果、素肌が隠されることなく晒されている胸元には痛そうな擦り傷がいくつもできていた。しかも、両膝や手のひらまで赤い血が滲んでいる。
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