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「宇宙人でも血は赤いんだな。……にしても、痛そうだな」
なんて、ぱっと目に入ったことを口に出していくが、少年宇宙人は返事をかえすことも、痛みを訴えることもなく、ぼんやりと俺の方だけを見ているだけだった。あまりの無反応に、転けた時に頭でも打ったのかと疑ってしまう。しかし、額を覆うさらっとした髪を掻き分け確認しても、特に怪我をしているようすはなかった。ただ、その際、やたら大袈裟に驚いてはいたが。
「あの……申し訳ないのですが、彼を治療してもらえないでしょうカ?」
そばにいた紳士風宇宙人が、何も言ってこない少年宇宙人に代わり、突然申し出てきた。
「生憎、私は治療薬を持ち合わせていまセン。大した怪我ではないので、消毒程度で大丈夫だとは思いマス」
実に簡単なお願いだったが、その唐突さに俺は返事を出し損ねていた。それを察してか、紳士はさらに続ける。
「見ず知らずの方に頼むのは失礼だとは重々承知していマス。ですが、ここは我々の星ではありまセン。この小さな怪我でも、傷口から我々の星にはない菌でも入れば重症化してしまう可能性もありマス」
至極もっともな説明だ。しかし、ならば上にあるUFOに戻れば良いのでは、という思いが頭をよぎってしまうが、風貌に合った柔らかな物腰に、つい促されるままに頷いてしまっていた。
「治療するのは良いんですけど、地球の薬とか使っても平気なんですか?」
「ハイ。我々の生態は地球人と酷似しているので問題ありまセン」
「そうですか。じゃ、コンビニで消毒液とか買ってくるんで、ちょっと待っててもらえますか」
そう言って、二人の宇宙人をその場に置いて近くのコンビニへと走って行った。
しかし、……俺は、なんで見ず知らずの宇宙人の世話を焼いているんだ? しかも、普通に会話までして。自分の行動ながら疑問を持ってしまった。
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